医師主導治験の流れ・注意点を解説

こちらの記事では、医師主導治験を実施する際の全体の流れと、それぞれの段階における注意点などをまとめています。例えば、資金調達や治験実施体制構築について、またSOP作成で覚えておきたい点など、ポイントを絞って紹介しています。抜けのない準備を行うためにも、ぜひ参考にしてみてください。

医師主導治験の全体の流れ

まず、医師主導治験を行う際に知っておきたい、全体の流れについて紹介します。治験の準備から承認に至るまで、大きく分けて4つの段階に分けられていますので、それぞれの段階についてどのような内容が含まれるのかを見ていきましょう(こちらでは、治験開始前の非臨床試験等は省いて説明を行っています)。

治験開始前

治験準備段階のイベントとしては下記の項目が挙げられます。

この段階では、意思決定をするべき重要なイベントを同時進行していくことが求められるため、特に資金調達の後から非常に忙しい時期となります。

治験実施中

治験実験中は、下記のような流れで進められます。

治験終了

治験が終了すると、症例報告書の回収や機器・治験薬の回収などを行います。IRB治験保終了報告までが非常に忙しい時期となるでしょう。

承認申請準備

治験終了後には承認申請を行うための解析や報告書、資料等の作成を行います。

治験準備段階のイベントと注意点

治験準備段階においては重要な意思決定がいくつも行われることから、資金調達を行ったあとは非常に忙しい時期となります。これは、「治験実施体制の構築」「SOP作成」「治験実施計画書、治験薬/機器概要書、同意説明文書・同意書、症例報告書の見本を作成」「薬事戦略相談」「CRO業務委託契約」「治験保険の加入」という6つの項目について並行して準備を進めていく必要があるためです。

さらに、治験開始前には治験審査委員会の審議・承認が行われますが、その前後でシステム監査を行うケースが多くなっています。システム監査とは、医療機関及び治験の組織と体制、システムが適切かどうかを評価する監査を指します。

医師主導治験の資金調達と注意点

医師主導治験を実施する場合、最初の資金調達は非常に重要であり、難関といえるステップになります。

企業治験と比較すると、医師主導試験はアカデミア価格が提供されることからコストを抑えられていますが、やはり企業からの資金提供や補助金がなければ治験の継続は困難です。

医師主導治験を行う場合の運営資金の提供元は大きく分けて「AMED(国立開発研究法人 日本医療研究開発機構)」または「民間資金」の2つが該当します。ただし、企業からの資金提供を受ける際には、「透明性の確保」「利益合判の管理」「被験者への説明と同意」を徹底することが注意点として挙げられます。

医師主導治験の治験実施体制構築と注意点

治験開始前には、治験実施体制の構築を行いますが、この段階では下記の点に注意する必要があります。

治験の要否はPMDAの臨床試験要否相談にて決定されますが、PMDAに相談する段階でCROが関係している場合もあります。多くの場合、治験を実施する際にスムーズに取り組んでもらうために、CROに医師主導治験の業務の一部を依頼します。そのためCROの選定も慎重に行っていく必要がありますが、特にこれから行う治験をしっかりと稼働させられるかどうか、という部分はしっかりと見極めるべきポイントといえるでしょう。

医師主導治験の実施に必要なSOP雛形・作り方・注意点

医師主導治験においては、SOP(標準業務手順書)が必要になります。SOPは、医師をはじめ、治験に携わる関係者それぞれにおける役割や業務手順を明確に示した文書です。

このSOPの雛形は、日本医師会によって運営されている「治験促進センター」のサイトで入手できるため、そちらを利用すると良いでしょう。特に、はじめて医師主導治験を実施する場合には、この雛形をアレンジして使用するとスムーズです。

ちなみに、医師主導治験で必要となるSOPは「医師主導治験における治験標準業務手順書」をはじめとしてさまざまなものが必要となります。中でも「モニタリングの実施に関する手順書」と「監査に関する計画書及び業務に関する手順書」については、IRBで審議を必要とする書類のため、しっかりと覚えておきましょう。

さらに、モニタリングや監査、データマネジメントなどについては、実施計画書も必要となります。手順書や実施計画書、チェックリストなど必要なものはセットにし、事前に作成しておくことをおすすめします。

注意点を押さえて、抜けのない準備を

こちらのページでは、医師主導治験を行う際の流れと注意点について解説してきました。

医師主導治験を行う場合には、非常に多くの手順が必要となります。こちらの記事では、SOP(標準業務手順書)の作成時の注意点について紹介していますが、ほかにも治験実施計画書や治験薬/治験機器概要書、同意説明文書などを作成する際にも注意すべき点がありますので、ひとつひとつ確認を行いながら進めていくことが必要になるでしょう。

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おすすめの治験管理
・支援システム
(CTMS)
【機能別】
おすすめシステム3選

被験者管理や進捗確認、文書対応、監査準備など、治験業務に伴う煩雑な作業を支援し、効率化と法規制対応を実現する治験支援システム。 ここでは、モニタリング・文書管理・EDCの主要機能別に、実績と信頼性のあるおすすめ3システムをご紹介します。

モニタリング業務向け
(治験の実施状況確認・報告)
QLIFICA
(SOLUMINA)
SOLUMINAのキャプチャ

画像引用元:SOLUMINA 公式HP(https://solumina.co.jp/service/#qlifica)

例えばこんな機能
  • 施設・症例・CRA単位で進捗をリアルタイムに見える化
  • チェック内容から報告書を自動作成、承認も一括完了
  • 課題の対応状況を履歴付きで一元管理、監査対応も容易
  • 複数施設の進捗と履歴を即時に把握し、作業漏れを防ぐ。
  • 文書・IRB・監査対応まで一括管理し、全体業務を効率化。
文書管理業務向け
(治験関連文書の保管・共有)
Agatha
(Agatha)
Agathaのキャプチャ

画像引用元:Agatha 公式HP(https://www.agathalife.com/)

例えばこんな機能
  • 文書ごとの承認状況をリアルタイムで一元管理
  • 電子原本として保管し、法規制や監査に対応
  • 試験や組織単位で柔軟に文書構成を設計・運用可能
  • 契約書や申請書類の承認・版管理を統一し、整合性と履歴を正確に管理
  • 原本性を保った電子保管で、GCP・ER/ES対応を文書単位で実現
EDC業務向け
(電子症例報告)
CapTool® シリーズ
(メビックス)
メビックスのキャプチャ

画像引用元:メビックス 公式HP(https://www2.mebix.co.jp/services/edc/)

例えばこんな機能
  • 入力内容に応じて画面項目を自動制御
  • 入力時に整合性エラーを即時にチェックして通知
  • クエリ対応履歴を一覧表示し進捗を共有
  • 入力作業がスムーズになり、記入ミスや作業ストレスを減らせる
  • DMや統計担当者とのやりとりが明確になり、確認・集計の手戻りがなくなる

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