治験の対象となるのは、大人ばかりではありません。小児治験も行われています。ここでは、小児治験の現状と課題について解説します。
小児治験の現状
薬には、実にさまざまな種類がありますが、それぞれ使用方法や用法・用量が細かく定められています。それに従った形で使用が求められるわけですが「子どもに使用するには有効性、安全性などの評価が不十分である」との理由から多くの薬が推奨される使用法とは異なる「適応外使用」の扱いです。
適応外使用を行った場合、保険診療の対象とならず、費用負担が増えてしまう可能性があります。それだけではなく、十分な効果が得られない、予想しなかった副作用が発生するなどの危険性も伴うものです。
ですが、多くの薬は大人を対象として開発されていることから、子どもが使用した場合の十分なデータが取れておらず、適応外使用となってしまう薬で溢れています。そこで求められるのが小児治験です。
ですが、小さな子どもは錠剤やカプセル錠を飲むことが難しいケースがあります。剤形変更といった形で薬の形状を変更して飲みやすくすることは可能です。しかし、剤形変更は医療従事者の負担が増える、薬の形状が変わることによって吸収率も変わるなど、有効性や安全性の評価が十分ではないなどのデメリットがあります。
こういったさまざまな理由があり、大人ほど小児治験は行われていないのが現状です。
小児治験の課題
小児治験を行うには、さまざまな課題が挙げられます。代表的な課題は、以下のとおりです。
安全性に関すること
子どもに限ったことではなく、確実に安全とは言えない治験薬を導入することに多くの方が不安を感じます。小児治験の場合は親が判断しなければならない部分も多く「安全性に不安がある治験薬を子どもに使わせるわけにはいかない」と感じる方も多いようです。
小児治験に関する認知度の低さ
そもそも、子ども向けの治験が行われていることを知らなかった方もいるのではないでしょうか。 大人と比較すると、小児治験の認知度は高いといえません。疾患を持つ子どもの親についても同様で認知度が高くなく、治験を受けることが選択肢に挙がりにくいのも課題といえます。
大人であっても実際に治験を受けたことがある方は非常に少ないでしょう。被験者となる子ども自身の理解不足だけではなく、親の理解不足が原因で治験を拒否されることも多いです。 そのため、治験の効果や安全性、リスクなどをわかりやすく説明するための取り組みに力を入れなければならないのも課題といえます。
子どもにとって大きな負担になることがある
治験を受ける場合は、何度も薬を飲んだり、採血を受けたりしなければなりません。治験について理解している大人であれば受け入れられることだったとしても、十分な知識を持たない子どもからすれば、よくわからないまま辛い治療を受けることになってしまうケースもあります。
予定していたとおりに薬が飲めなかったり、採血を拒否されてしまったりする場合には治験がうまく進まない可能性があるのも課題です。