治験の二重登録防止について

治験を行う際に注意したいことのひとつが被験者の二重登録です。被験者が二重登録してしまうと、治験結果の信頼性が担保できないことはもちろん、被験者に健康被害が発生しかねません。リスクを回避するためには、治験の二重登録を防止する必要があります。ここでは、二重登録の防止策についてまとめました。

治験参加者候補(被験者)の二重登録に関する防止策

治験への参加を検討している人が複数の募集サイトに登録し、複数の募集情報を閲覧すること自体は、特に問題ありません。問題になるのは、治験参加候補者である「被験者」が、複数の治験に同時期に参加することです。

ここでいう「二重登録」は、被験者の治験参加登録のことを指しています。治験の予約や参加を登録する段階で、二重登録になることを防ぐことが大切です。具体的な防止策を確認しておきましょう。

試験参加履歴の管理の徹底

被験者の中には、同時期に複数の治験に参加したり、休薬期間を守らず続けて参加したりといった人がいます。

治験を行う際は、臨床試験受託事業協会(臨試協)が運用している「被験者照合システム」を利用して重複登録がないか確認するのが一般的です。このシステムで2020年に二重登録が発覚した件数は1,086件でした。近年の二重登録発覚は、1,000人近くで徐々に増加傾向にあります。

二重登録されてしまうと、正確な結果が出ないおそれや被験者本人に健康リスクが発生するおそれが否定できません。

被験者の二重登録を防止するため、試験参加履歴の管理の徹底が求められています。臨試協のシステム活用はもちろん、独自システムで被験者の過去に参加した試験情報や休薬期間の管理を徹底することも、二重登録の防止に有用です。

二重登録が発覚した場合の被験者の退会措置

二重登録に対するペナルティを用意しておくことも予防効果につながります。二重登録が発覚した場合は、被験者を強制退会とし、以後の情報取得・再登録ができないように厳格なルールを運用するのも良い方法です。

たとえば、システムに登録された被験者にメールを一斉配信し、インターネットリサーチを実施。複数の被験者参加情報提供サイトへの登録があり、二重登録の可能性がある被験者に対して、以後の参加情報を提供しないという対応をしている会社もあります。

また、治験時に誓約書を取得して、二重登録・同時に複数の治験参加をしないことを確認し、虚偽申告があれば、退会措置を講じる旨を確約しておくことも大切です。

治験情報サイトの登録が重複しているからといって、それ自体で特に問題が生じるわけではありません。しかし、複数から情報が届くことで、他の治験に目移りしたり、間違えたりして二重登録になる可能性はあります。情報提供自体を一本に絞る運用も有効な手段です。

二重登録の危険性

休薬期間を経過せずに続けて治験に参加したり、同じ時期に複数の治験に参加したりすると、他の治験の影響で一部の数値が異常値を示すなど、治験で確認したいことが正確に確認できない可能性があります。しかし、二重登録が禁止されているのは、治験運用側以上に被験者にとってのデメリットが大きいからです。被験者にとっての危険性をきちんと伝えれば、二重登録を防止することにつながります。二重登録の被験者のデメリットを確認しましょう。

健康被害の問題

治験の中でも健康な成人が対象になっているものは、採血が多いことが特徴です。短期間に大量の採血が行われます。複数の治験に参加することで、短期間に血を抜かれ過ぎて、貧血や立ちくらみなど、健康被害が生じるおそれがあります。場合によっては、命にかかわるような深刻な健康被害が生じるおそれもあります。健康被害のリスクが高まることが、二重登録の最大のデメリットです。

薬の飲み合わせの問題

健康被害として考えられる原因のひとつが、薬の飲み合わせです。複数の治験に参加すると、その薬の飲み合わせで健康被害が高まります。実際に、治験における死亡事例があります。

1993年、帯状疱疹の治療薬であるソリブジンと5-FU系抗がん剤を併用し、重篤な血液障害が発現し、治験段階で3名の死者が出てしまったという事例です。

このような事例を防ぐため、治験に参加する際は必ず、医師から併用薬やサプリメントなどの確認を行っています。他の治験に参加していることを隠してしまうと、医師による飲み合わせのチェックができません。

被験者は治験薬を軽く考えていることがあります。二重登録のリスクをきちんと伝えて二重登録を防ぐことが大切です。

補償が受けられなくなる

治験に参加して健康被害が生じた場合は、補償があります。しかしそれは治験のルール・手順に従っている場合に限ります。被験者自身の故意で健康被害が生じた場合は、補償対象外となります。

治験の重複登録が禁止されていることは、治験参加時に説明されます。それでも二重登録をしたとすれば、それは被験者の「故意」です。健康被害が発生した場合は、当然、補償を受けられません。

システムを活用して二重登録を防止しよう!

臨床試験の質の確保と被験者の保護のためには、二重登録を防止することが重要です。二重登録を防止する方法として、システムの活用は外せません。被験者の治験参加記録を確認できるシステムを利用して、被験者情報を管理しましょう。ルール違反があれば退会など、ルールを決めて運用することも大切です。

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おすすめの治験管理
・支援システム
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おすすめシステム3選

被験者管理や進捗確認、文書対応、監査準備など、治験業務に伴う煩雑な作業を支援し、効率化と法規制対応を実現する治験支援システム。 ここでは、モニタリング・文書管理・EDCの主要機能別に、実績と信頼性のあるおすすめ3システムをご紹介します。

モニタリング業務向け
(治験の実施状況確認・報告)
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(SOLUMINA)
SOLUMINAのキャプチャ

画像引用元:SOLUMINA 公式HP(https://solumina.co.jp/service/#qlifica)

例えばこんな機能
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  • チェック内容から報告書を自動作成、承認も一括完了
  • 課題の対応状況を履歴付きで一元管理、監査対応も容易
  • 複数施設の進捗と履歴を即時に把握し、作業漏れを防ぐ。
  • 文書・IRB・監査対応まで一括管理し、全体業務を効率化。
文書管理業務向け
(治験関連文書の保管・共有)
Agatha
(Agatha)
Agathaのキャプチャ

画像引用元:Agatha 公式HP(https://www.agathalife.com/)

例えばこんな機能
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  • 電子原本として保管し、法規制や監査に対応
  • 試験や組織単位で柔軟に文書構成を設計・運用可能
  • 契約書や申請書類の承認・版管理を統一し、整合性と履歴を正確に管理
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EDC業務向け
(電子症例報告)
CapTool® シリーズ
(メビックス)
メビックスのキャプチャ

画像引用元:メビックス 公式HP(https://www2.mebix.co.jp/services/edc/)

例えばこんな機能
  • 入力内容に応じて画面項目を自動制御
  • 入力時に整合性エラーを即時にチェックして通知
  • クエリ対応履歴を一覧表示し進捗を共有
  • 入力作業がスムーズになり、記入ミスや作業ストレスを減らせる
  • DMや統計担当者とのやりとりが明確になり、確認・集計の手戻りがなくなる

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