2018年4月1日に施行された臨床研究法。施工後5年で見直しが規定されているため、2023年の通常国会にて改正法案が提出される見込みとなっています。ここでは臨床研究法の改正について解説します。
臨床研究法とは?
臨床研究法は、臨床研究の対象者や国民の臨床研究に対する信頼性の確保及び実施の推進、保健衛生の向上に寄与することなどを目的として、2018年4月1日に施行された法律です。臨床研究法における「臨床研究」の定義は、該当する医薬品などの有効性または安全性を確認することを目的として、医薬品等を人に対して投与または使用することにより行う研究とされています。通常の診療行為のみを行う観察研究は非該当です。
臨床研究法の内容は主に2つで構成されています。1つが臨床研究の実施に関する手続きです。特定臨床研究の実施に関する措置や重篤な疾病等が発生した場合の報告義務、実施基準違反に対する指導・監督について定められています。2つ目が製薬企業等が講じるべき措置です。企業等が行う医薬品などの臨床研究に対して資金提供をする場合は、契約の締結を義務付け、臨床研究に関する資金提供の情報公開の義務付けが定められています。
臨床研究実施基準を遵守する必要があり、違反した場合には立ち入り検査や改善命令、研究の一部またはすべての停止命令、懲役・罰金等の罰則が科せられます。
臨床研究法の改正内容
2022年6月3日に公開された「臨床研究法施行5年後の見直しに係る検討のとりまとめ」により、臨床研究法の検討項目が明らかになりました。ここでは2つの検討項目について解説します。
革新的な医薬品などの研究開発の促進
1つ目の検討項目は「革新的な医薬品などの研究開発の促進」です。臨床研究法の適用範囲に関して、「監察研究を除外する」としている現行の規定があいまいであることから、明確な解釈を示すこととしました。
法の対象となる臨床研究を、「研究計画に従って医薬品などを使用する研究、および適切な医療として医薬品などを使用するもので、対象者への通常の医療と大きく異なる傷害・負担が大きい検査などを研究目的で診療に追加して行う研究」と定義し、「傷害・負担が大きい検査など」についても、明確な基準や例示を示すこととしています。
また現行の臨床研究法では、研究で医薬品を適応外使用すると一律に「特定臨床研究」とされ、規制が厳しくなります。既承認の用法・容量とリスクが同程度であれば、特定臨床研究の範囲から除外するよう見直し、リスクの判断は臨床研究部会の下に設置する専門委員会で行うものとしました。
研究の信頼性確保
2つ目の検討項目は「研究の信頼性確保」です。現行の臨床研究法における情報提供関連費及び接遇費については、研究資金や寄付金等と異なり公表の対象としていません。臨床研究を実施する特定の医療関係者等に必要実費の範囲を超えて直接支払われる性質のものでなく、当該費用提供が臨床研究の不正につながる蓋然性が低いと考えられることが理由です。
情報提供関連費及び接遇費を公表対象外とすることによる費目付け替えの可能性が指摘されたため、特定臨床研究に関与する企業については、費目の付け替えが行われている可能性の有無を確認できる状態とするよう、企業における情報提供関連費・接遇費の年間総額の公表を法令で義務付けるべきとしました。
臨床研究や治験の基礎知識をチェック
臨床研究法は2023年の通常国会にて改正法案が提出される見込みです。臨床研究や治験を行う場合は臨床研究法を遵守する必要があります。下記ページで臨床研究・治験の知識をまとめているため、ぜひ参考にしてください。