治験費用の算定

ここでは、治験費用算定の課題や解決策などについて解説します。

治験費用算定の課題

業務量や市場価格に基づいた治験費用の算定根拠が不明確

業務量や市場価格に基づく治験費用の算定とは、具体的な作業内容やその工数、さらには市場での取引価格に基づいて費用を割り出すというものです。しかし、この根拠が不明確となる理由は、個々の治験の業務内容や規模がさまざまなため、一律の基準作りが難しいからです。

第一に、治験の規模や内容によって変動する業務量をどのように評価し、算定するか。具体的な業務内容は治験の種類や規模、期間などにより異なるため、同一の基準で算出することは困難といえるでしょう。

次に問題なのが市場価格です。治験に関連する業務を行う請負業者が複数いる状況下で、その多くが業務内容や規模に応じて料金を設定します。その為、競争原理が働く一方で価格の透明性が欠けるため、治験費用を算定する基礎とする市場価格が不明確な状況が続いています。

被験者毎の進捗に応じた業務に対する請求になっていない

治験は医薬品開発の過程で行われる複雑な作業であり、絶えず新たなデータが得られ、その結果が反映されるものです。そのため、被験者一人ひとりにおいて、進行状況や評価結果は異なります。

しかし、現状の治験費用の算定は一律的であり、被験者毎の進捗状況や各業務内容に応じた費用の請求がなされていないという課題が指摘されています。従って、被験者が増えた場合でも、業務の量や内容が同じであれば同等の費用が算定されることがままあります。

これに対し、被験者一人ひとりの進捗に応じた業務の内容を明確にし、それに対する適正な費用を請求することが求められています。これにより、被験者毎の個別の事例に即した正確な治験費用の算定が可能となり、より効率的かつ公正な治験運営が実現できると考えられます。

治験費用算定の解決策

ベンチマーク型コスト算定を用いる

ベンチマーク型コスト算定とは、治験実施計画書に基づいて、実施業務ごとにベンチマークに応じた費用が設定され、実際の実施業務に合わせてVisitごとの費用が算出されるものです。このアプローチにより、複雑な試験デザインにも柔軟に対応できます。

また、各実施業務ごとに設定された費用は、サービスプロバイダーなどで集積され、ベンチマークが定期的に更新されます。これにより、最新の市場価格が反映され、Visitごとの費用が効率的に算定されます。

依頼者がEDCなどのシステムと連動させることで、Visit paymentにも容易に対応可能であり、請求書が自動的に作成・提示されるシステムも構築できます。

適正な市場価格に基づく治験費用の交渉・競技・合意の文化を根付かせる

適正な市場価格とは、治験費用が業界の標準的な範囲にある価格を指します。治験を行うための医師、看護師、研究者などの人件費、試験を行うための場所の費用、治験に参加する患者への報酬や交通費、治験に使用する薬剤や機器の価格など、治験を行う上で必要な多くの要素が適正に評価される市場価格です。

交渉は、製品の開発を進めるためには欠かせないプロセスです。そして、その交渉が適正な市場価格に基づくものであることが求められます。適正な市場価格での交渉は、治験費用の算出を公平・透明性のあるものにし、信頼性や治験の品質を確保します。また、適正な市場価格を基にした交渉は、業界全体のコスト水準の理解を深め、事業者間での競争を促進します。

合意の文化とは、そのような交渉を通じて、お互いが納得する形で治験費用を決定する文化を指します。合意の過程である「競技」は、非常に重要です。競争性を通じて、治験費用が公正かつ効率的に決定され、業界全体の治験費用の最適化に寄与します。

このように、適正な市場価格に基づく治験費用の交渉・競技・合意の文化を根付かせることで、効率的かつ公正な治験費用の算出が可能となります。これは、不適切な治験費用によるリスクを回避し、業界全体の持続的な発展を支えるために不可欠な取組みと言えるでしょう。

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おすすめの治験管理
・支援システム
(CTMS)
【機能別】
おすすめシステム3選

被験者管理や進捗確認、文書対応、監査準備など、治験業務に伴う煩雑な作業を支援し、効率化と法規制対応を実現する治験支援システム。 ここでは、モニタリング・文書管理・EDCの主要機能別に、実績と信頼性のあるおすすめ3システムをご紹介します。

モニタリング業務向け
(治験の実施状況確認・報告)
QLIFICA
(SOLUMINA)
SOLUMINAのキャプチャ

画像引用元:SOLUMINA 公式HP(https://solumina.co.jp/service/#qlifica)

例えばこんな機能
  • 施設・症例・CRA単位で進捗をリアルタイムに見える化
  • チェック内容から報告書を自動作成、承認も一括完了
  • 課題の対応状況を履歴付きで一元管理、監査対応も容易
  • 複数施設の進捗と履歴を即時に把握し、作業漏れを防ぐ。
  • 文書・IRB・監査対応まで一括管理し、全体業務を効率化。
文書管理業務向け
(治験関連文書の保管・共有)
Agatha
(Agatha)
Agathaのキャプチャ

画像引用元:Agatha 公式HP(https://www.agathalife.com/)

例えばこんな機能
  • 文書ごとの承認状況をリアルタイムで一元管理
  • 電子原本として保管し、法規制や監査に対応
  • 試験や組織単位で柔軟に文書構成を設計・運用可能
  • 契約書や申請書類の承認・版管理を統一し、整合性と履歴を正確に管理
  • 原本性を保った電子保管で、GCP・ER/ES対応を文書単位で実現
EDC業務向け
(電子症例報告)
CapTool® シリーズ
(メビックス)
メビックスのキャプチャ

画像引用元:メビックス 公式HP(https://www2.mebix.co.jp/services/edc/)

例えばこんな機能
  • 入力内容に応じて画面項目を自動制御
  • 入力時に整合性エラーを即時にチェックして通知
  • クエリ対応履歴を一覧表示し進捗を共有
  • 入力作業がスムーズになり、記入ミスや作業ストレスを減らせる
  • DMや統計担当者とのやりとりが明確になり、確認・集計の手戻りがなくなる

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