治験ボランティア

「治験」の治療では、研究・開発などが進められている新しい薬を用いています。「治験ボランティア」とは、その治験に必要不可欠な被験者へと自らの意思で参加することを指します。
治験ボランティアの募集において、参加者にはどのようなメリット・デメリットがあるのかをここでは説明します。

治験ボランティアが得られるメリット

治験ボランティアと類似した言葉に「治験バイト」があります。実際にはアルバイトというわけではなく、新しい薬の臨床試験を受けるモニターのことで、言わば報酬のあるボランティアです。治験ボランティアとの明確な線引きはありません。アルバイトという名称があるほど、治験におけるボランティアでは多くのメリットを得られます。

開発中の治療方法を受けることができる

治験では研究・開発が行われた新しい薬を使った治療が行われます。これまでの治療方法ではなかなか効果を得られなかったという場合でも、治験で使われた薬によって症状の改善する可能性があります。
また、同時に医療に貢献できるという点も大きいと言えるでしょう。新しい薬の研究・開発には治験が不可欠です。治験ボランティアの協力によって、大勢の人たちが新たな薬を使えるようになります。

無料で専門医の検査・診察が受けられる

治験では被験者の健康状態がこと細かくチェックされるため、自分の体や症状についてより詳しい情報を得られます。検査や診察によって専門医からの説明も受けられるのもメリットといえるでしょう。

さらには、こうした治験の検査料や診察料、検査や診察のために通院する交通費は製薬会社が負担することになっています。つまり、治験を受けると被験者は言わば無料で医師の検査や診察を受けられるのです。

また、治験を受けるためにはさまざまな条件があり、日常生活でも定期的に薬を服用するなどの決まりごとを守らなくてはなりませんが、こうした被験者への負担にも報酬が支払われます。

治験ボランティアのデメリットについて

治験ボランティアにはメリットだけでなくデメリットも存在しています。まだ世の中に出回っていない薬を使った治療を受けますので、デメリットについてもしっかり把握・納得した上で治験に参加するようにしなければなりません。

来院・検査・通院の時間がかかる

治験では当然、被験者は検査や診察を受けることになります。そのためその時間、プラス来院や通院の時間も必要となります。
治験内容によっては何回も通院しなければならないこともありますし、場所によっては医療施設へ行くために長い時間を要するかもしれません。
申し込む際には治験がどこで行われるか、通院は何回なのか、最低限チェックしましょう。
また、前述したように、決まった時間に薬を服用するなどの規則正しい服薬が義務づけられています。治験ごとに守らなければいけないルールがあり、ときには食事や運動にも制限が設けられることもあります。

プラセボ(偽薬)が処方される可能性

「プラセボ」とは薬のような見た目ではあっても実際には何の効果もない偽薬のことです。
治験ではこのプラセボが処方される場合もありますが、被験者には知らされません。
これは「薬が効いている」という思い込みによって症状が変化しないことを確認するためもので、治験薬の効果をより客観的なデータとして取得するために処方されます。
また、プラセボについては倫理面を考慮して類似した効果を持つ薬が処方される場合もあります。

副作用が生じる可能性

薬の中には副作用が生じるものもあり、治験で用いられる治験薬にもそのおそれはゼロではありません。また、治験薬は研究や開発をしている最中の新しい薬であるため、場合によっては未知の副作用が生じるケースもあります。
万一、副作用によって健康被害があった場合には、専門医が適切な治療をし、その内容や程度に適した補償が受けられることになります。
また、治験は安全性に注意を払って行われていますが、副作用だけでなく、治験薬に効果がなかった際は病状が悪化するというリスクもあることをしっかり把握しておきましょう。

メリットだけでなくデメリットも熟知した上で参加を

この記事では治験ボランティアのメリットとデメリットを取り上げました。
病気を抱えている人にとっては、治験によって新たな薬による治療を受けられることこそが大きなメリットになるかもしれません。医療への貢献ができることや、無料で検査や治療が受けられることも魅力と言えるでしょう。
その一方で、行動や時間の拘束や、副作用の有無は治験のデメリットとして数えることができます。
治験に申し込む際にはこうしたメリット・デメリットを十分把握した上で参加を検討してください。

【医療機関向け】治験ボランティア募集のポイント

十分な人数を集める

まずは治験実施計画書の内容をしっかり理解し、その上で十分な数の治験ボランティア候補をリストアップします。リストアップした候補者の背景や特徴をふまえ、そのなかから、登録できると判断した患者のみに候補者をしぼっていきましょう。

なお、他院に紹介された患者を候補者としてリストアップする場合には、紹介元の医師からの適切な人数を見積もります。

被験者の理解を深める

治験ボランティアの候補者となる患者が、治験についてきちんと把握してから参加するかどうかを検討できるように、明確な説明を心がけることが大切です。分かりやすい文書や理解を補助するための資料を事前に作成して提示することで、理解が充分でないことによって生じる患者の不安を和らげるよう努めましょう。

スクリーニング脱落を最小限に留める

同意を取得したあとのスクリーニング脱落数を、できる限り抑えることが大切です。スクリーニング期の検査結果が除外基準に抵触する症例があまりにも多いと、登録できる患者数が、想定を大幅に下回ってしまう可能性があるからです。

過去のデータなどをふまえ、ゆとりをもって基準をクリアできると考えられる被験者候補を選定しておくことが求められます。

治験ボランティアを募集する方法

院内にポスター・パンフレット設置

院内の目につきやすいところにポスターを掲示することで視覚的にアピールして、ボランティアを集めます。選択基準や除外基準についてできるだけ分かりやすく記載することで、ポスターを見た人が、自分が被験者になり得るかどうかをイメージしやすくなるよう工夫してください。

近隣施設にポスター・パンフレット設置

院内だけでなく公民館や市民センターなど、近隣にある施設にも、ポスターの掲示やパンフレットの配置をしましょう。できるだけ多くの人にボランティア募集に関する情報が広まるよう工夫します。

ウェブサイトの利用

情報発信の手段のひとつとして、ウェブサイトなども積極的に利用していきましょう。実施医療機関の公式ホームページや治験責任医師のSNSなどに、ボランティアの被験者を募集しているという旨の案内・情報を載せます。

主なウェブ広告の特性について把握しておくことで、より効果的に情報発信をすることが可能になります。それぞれのウェブ広告の特性を簡潔にまとめると、次のようになります。

案内文書の送付

すでに信頼関係の構築ができている患者のうち、治験ボランティアの候補者になり得る方に対して、治験内容に関する案内文書を送付します。

市民に向けた公開講座

市民公開講座などで、治験に関連のある疾病の病態や診断、治療、そして予防方法などについて解説することによっても、ボランティアを集めやすくなります。

募集時は薬機法・医療法に沿った対応が必要

ボランティアを募集するために、治験に関する情報や内容を提供する際には、薬機法や医療法に抵触することのないよう注意する必要があります。「治験に係わる被験者募集のための情報提供要領」(日本製薬工業協会)などを参考にしてください。

治験支援システム比較はこちらから

     治験支援システム PICK UP

このサイトをご覧なら、治験業務の負担を減らす支援システムの導入を検討中だと思います。治験のシステムといえば「CTMS(治験管理システム)」を連想するかもしれませんが、CTMSはマネジメントの要素が強いため、「モニタング業務の負担軽減」「文書管理を自動化したい」といった目的が他にあるのであれば、各目的に特化したシステムの導入も検討してみてはいかがでしょうか。運用目的にフォーカスされている分、より低コストで運用できる高機能なシステムが見つかるはずです。

特にニーズの高まっている3つの目的に関してピックアップしてご紹介します。

モニタリング業務の
負担を減らしたいなら

例えばこんな機能

●リアルタイムでデータ収集の進捗・逸脱を確認できる
●各施設・各患者の状況が一目でわかる
●モニタリング報告書がほぼ自動的に作成される

モニタリング業務システム
の比較はこちら

文書管理の
負担を減らしたいなら

例えばこんな機能

●各ガイドラインに沿った文書をほぼ自動で作成する
●電子署名や版管理機能などがあり文書をデータ上で管理できる
●PDFやExcelで出力できる

文書管理の負担軽減
システムの比較はこちら

EDCを導入したいなら

例えばこんな機能

●電子症例報告書(eCRF)の作成や既存データの転記ができる
●患者への説明や承諾を得る作業が同一システム内で完結できる

EDCシステム
の比較はこちら

関連ページ

CTMS Media ~国内の治験・臨床研究支援システム情報まとめサイト~

知っておきたい治験・臨床研究の基礎知識
未成年の治験で注意すること
治験のGCP実地調査について
SDVとは