治験中に得られる重要な安全性情報の収集方法を統一して、必要に応じて適切な措置を講じることは非常に重要なことです。そのためには、「治験中に得られる安全性情報の緊急報告の取り扱いに関する適切な手順の策定」が必要となります。この記事では、緊急報告のための基準について解説していきます。
緊急報告のための基準について
緊急報告のための基準は大きく分けて「重篤で予測できない副作用」と「その他」に分類されます。それぞれの項目について解説します。
重篤で予測できない副作用
重篤で予測できない副作用は全て緊急報告の対象となり、自発報告や臨床試験や疫学研究中の副作用報告も含まれます。一方で、重篤な場合であっても予測可能な副作用は通常、緊急報告の対象外となります。また、当該医薬品との因果関係が否定された臨床試験中の事象も予測の可否とは関係なく、同様に緊急報告の対象外となります。治験依頼者は重篤で予測できない副作用の報告を受けた場合には、迅速に報告しなければなりません。治験においては因果関係の評価が重要であり、医薬品との関連が示唆される事象は全て副作用とみなされます。そのため、市販中の医薬品に関する有害事象の報告は、関連性が高い可能性があります。因果関係の程度を示すために様々な用語や尺度が使用されるが、「因果関係があるらしい」、「因果関係が疑われる」または「因果関係は否定できない」のような用語はいずれも因果関係を示唆しています。
その他について
上記の「重篤で予測できない副作用」以外でも、重大な情報は報告されなければなりません。例えば、リスク・ベネフィット評価に大きな影響を与える情報や、治験計画の変更が必要な情報がこれに該当します。具体的には、予測される重篤な副作用の頻度が臨床的に重要なレベルで増加した場合、生命を脅かす疾患に使用される医薬品がその効果を有しない場合、新たな動物試験結果から安全性に関する重大な知見が得られた場合などがあります。これらの情報は医薬品の安全性や効果の評価に重要であり、適切な措置を講じるために速やかに報告されるべきです。
報告期限について
死亡または生命を脅かす予測できない副作用の場合は、極めて迅速な報告が必要です。治験中に生じた死亡または生命を脅かす予測できない副作用については、治験依頼者はその副作用が緊急報告の必要条件に当てはまると知った日から7日以内に規制当局に知らせ、完全な報告書をさらに8日以内(計15日以内)に提出します。その他の副作用については、15日以内に報告することが求められます。これらの報告期限は、治験依頼者が規制当局に報告する期限です。
報告方法
報告方法については、緊急報告書の特定フォーマットはありません。ただ、基本的な情報を含むことが重要なことは言うまでもありません。緊急時報告でデータが揃っていない場合、追加のデータ入手に努める必要があります。全ての報告は、規制当局や他の公的機関に提出されることになります。
重篤な副作用の緊急報告に含まれるべき必須情報
■患者の詳細
- イニシャル
- 関係する他の確認事項(例えば、症例 No.等)
- 性
- 年齢、生年月日
- 体重
- 身長
■2. 被疑薬
- 商品名、一般名(成分名)、治験記号など
- ロット番号
- 被疑薬が処方または投与された目的(効能・効果)
- 剤型、含量
- 1日投与量と用法(単位を明記すること)
- 投与経路
- 投与開始日と時刻
- 投与中止日と時刻、または投与期間
■3. 他の治療
併用薬(一般用医薬品を含む)、併用療法についても被疑薬と同様の情報を提供する。
■4. 副作用の詳細
- 当該副作用を重篤と判断した基準
- 発現部位と重症度を含めた副作用の詳細
- 発現日時
- 消失日時または持続期間
- 投与中止後の経過、再投与後の経過
- 場所(病院、自宅等)
- 転帰
- その他の情報
■5. 報告者の詳細
- 名前
- 住所、所属
- 電話番号
- 専門
■6. 治験依頼者または企業の詳細、及びその他の連絡事項
- 治験依頼者/企業の名前、住所
- 企業の連絡窓口者の名前、住所、電話・ファックス番号
- 報告の情報源(治験中、自発報告、文献情報など)
- 治験依頼者/企業がその情報を最初に入手した日
- 国内・国外の別、国外であればその国名
- 規制当局への報告の種類 初回か、フォローアップか(1回目、2回目等々)
- 治験依頼者/企業が副作用発現症例を特定する症例 No.