臨床研究・臨床試験・治験の違い

臨床研究において、臨床試験、治験は非常に重要なものです。ただ、この両者は根拠となる法律などが違うことを理解しておく必要があります。臨床試験は治療の安全性や効果を確かめるためにおこないます。「特定臨床研究(製薬企業等から研究資金等の提供を受け、医薬品等を用いる臨床研究と未承認・適用外の医薬品等を用いる臨床研究)」の場合、臨床試験では「臨床研究法」という法律の適用を受けています。一方で、治験は臨床研究の一部ではありますが、特に厚生労働省から承認を受ける目的でおこなわれるものです。適用される法律や規則は、「医薬品医療機器等法」「GPC省令」となります。

臨床研究法とは

臨床研究法とは、過去に相次いだ臨床研究に関する不正を繰り返さないために、法的な規制が設けられた結果、制定されたものです。国民の臨床研究に対しての信頼を確保することを目的としています。対象となるのは「 製薬企業等から研究資金等の提供を受け、医薬品等を用いる臨床研究」と「未承認・適用外の医薬品等を用いる臨床研究」であり、これらを「特定臨床研究」といいます。

臨床研究とは

臨床研究は、医療における疾病の予防方法、診断方法及び治療方法の改善、疾病病原および病態の理解並びに患者の生活の質の向上を目的として実施される医学系研究であって、人を対象とするものと定義されています。つまり、人を対象とした広い意味での医学研究全体を指します。臨床研究というカテゴリーの中には、上記の「特定臨床研究」のほか「臨床試験」、「治験」も含まれます。ただ、臨床研究は、それ以外にも手術・手技の臨床研究や一般医療なども含まれていて、これらでは明確に臨床研究法を適用するわけではなく「努力義務」となっています。

治験とは

治験とは、臨床試験の中でも特に厚生労働省の承認を受けようとする場合におこなわれる臨床試験です。治験では「臨床研究法」の適用を受けませんが、試験に参加する方の人権を最優先に考えるために、国が定めた規則である「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(=GCP省令[Good Clinical Practiceの略])」を守る義務があります。また、医薬品,医療機器及び再生医療等製品などの規制の基本となる法律「 医薬品医療機器等法」の適用も受けることになります。

臨床研究法の役割

臨床研究は、前述したように過去の臨床研究においてデータの不正操作など不適切な事象が多数発生したことで試験結果の信頼性が大きく損なわれたことに端を発して制定されました。その目的は、「臨床研究の対象者、国民の臨床研究に対する信頼性の確保及び実施の推進」と「保健衛生の向上に寄与」となっています。以下の項目では、臨床研究を実施するに当たり、臨床研究法やその他の倫理的な面などで考慮するべきことを解説していきます。

動物実験からの移行

人間に対しての臨床試験や治験を実施する前には、動物実験をおこなうことが多くあります。創薬研究には動物実験が不可欠ではありますが、近年では動物福祉の観点からさまざまな倫理観が求められています。そのため、GLP(試験検査の業務管理)や医薬品規制調和国際会議(ICH)により、臨床研究における動物実験の標準化がおこなわれています。これらの活動は、もちろん、臨床試験に移行する際に人間に対する安全性や効力を確保するためですが、不要な動物実験に対する抑制という意味でも評価されています。動物福祉を考慮しない実験では、企業イメージを損なう可能性もあります。日本でも「構成料同省の所管する実施機関における動物実験等の実施に関する基本指針」により、多くの研究機関は適切な動物実験を実施しています。

治験計画書の作成

臨床研究において、臨床試験や治験をおこなう場合には計画書が必要となります。臨床研究法に基づく臨床試験の場合には、その研究施設に「認定臨床研究審査会」を設置して計画書を作成、厚生労働大臣に提出します。一方で治験については、GCP省令などに基づき、申請を行います。主な項目としては、当該治験の実施を科学的に正当と判断した理由を記した文書・治験実施計画書・インフォームド・コンセントに用いられる説明文書及び同意文書・症例報告書の見本・最新の治験薬概要書などがあります。

倫理的な考慮

臨床研究には倫理的な側面も非常に重要です。そのため、厚生労働省は「臨床研究に関する倫理指針」を出しています。そのなかで、臨床研究には「独立かつ公正な立場に立った倫理審査委員会による審査」による承認が必要と定められています。倫理委員会は研究を実施する施設の長(病院長など)が設置し、独立した議論ができることを確保しなければなりません。臨床研究が倫理指針に基づいて適格に計画され実行されているかを判断し、臨床研究の実施の可否、継続の可否について施設の長へ意見を述べることを目的としています。

管理組織の確立と実施

臨床研究法に基づく臨床研究を開始するには、認定臨床研究審査会」を設置することが求められています。この審査会により、研究の適合性を審査して、厚生労働大臣に実施計画を提出します。その計画に従って研究責任医師が研究を実施していきます。

安全管理

臨床研究の安全管理は、倫理指針で定められています。例えば、有害事象(死亡・重篤な症状)が発生した場合には研究責任者が72時間以内に研究機関の長へ1次報告をすることになっています。研究機関の長は直ちに倫理委員会へ審査を依頼、同時に厚生労働大臣への報告もおこないます。軽症の場合でも、初回報告は10日以内と定められています。このように、安全管理においても臨床研究法ではしっかりと定められています。

治験に関する法律・規制

医薬品医療機器等法

医薬品・医療機器等の有効性・安全性を確保するための法律です。目的は、「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うとともに、医療上特にその必要性が高い医療品及び医療機器の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ること」となります。臨床研究の中の「治験」に関しては、この法律が適用されます。

ICH(国際薬事関連年次会議)

ICHは、医薬品規制当局と製薬業界の代表者が協力して、科学的・技術的な観点から医薬品規制に関するガイドラインを作成する国際会議です。1990年に創設され、グローバル化する医薬品開発・規制・流通に適応して進化してきました。ICHの使命は、有効に資源を活用し、高品質で安全かつ有効な医薬品が開発され、市場に投入されるようにすることです。2015年にスイス法人化され、現在は、総会、管理委員会、作業部会などから構成される法人主体です。日本からは厚労省所管の「独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)」が参加しています。

FDA(米国食品医薬品局)

FDAは、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)の略称で、アメリカ合衆国の連邦政府機関の一つです。FDAは、食品・医薬品・化粧品・医療機器などの規制を担当し、これらの製品が安全で有効であることを確認して市場に出回るように監督しています。FDAは、医薬品や医療機器の承認に関する審査や監視、化粧品やサプリメントの安全性についての規制、食品の表示に関するガイドライン策定など、幅広い業務を行っています。FDAは、米国国内だけでなく、世界中の製造業者や製品にも影響を与える重要な規制機関として、高い信頼と権威を持っています。

臨床研究にはさまざまなルールが存在する

ご紹介してきたように、臨床研究は、臨床試験、治験を含んだカテゴリーです。そして、臨床研究法、治験の場合にはGCP省令と医薬品医療機器等法と、適用される法律も違います。また、倫理指針などもあります。制度は煩雑ではありますが、人間を相手にした制度である以上、安全性が最優先されるべきであり、ミスをすれば命にかかわる重大な事案になることを考えれば、細心の注意を払って実施する必要があります。臨床研究や治験に関わる人全員が慎重に、しっかりとルールを守る必要があるのです。

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