治験の中には「バーチャル治験」と呼ばれるものがあります。ここでは、バーチャル治験とは何か、実施するメリットやデメリットなどについて解説します。
バーチャル治験とは
バーチャル治験とは、IoTの技術を活用し、遠隔で臨床試験のデータを集める治験のことをいいます。従来の治験は、病院など治験会場に集まって行うのが一般的でした。バーチャル治験の場合、参加者は自宅や、自宅近くの医療機関などに足を運ぶことになります。
バーチャル治験では、さまざまなツールやサービスを活用して治験を進めていきます。例えば、ビデオ通話システムを用いたオンライン診療やオンライン服薬指導、パソコンなどを使い測定データや症状といったものを記録するツールなどです。
より正確な情報を得るために「ウエアラブルデバイス」と呼ばれる自動的に参加者の情報を取得・送信できるデバイスが使われることもあります。
バーチャル治験のメリット・デメリット
注目が集まっているバーチャル治験ではありますが、メリットとデメリットの両方があります。それぞれ解説します。
メリット
大きなメリットとして挙げられるが、遠隔で治験に参加できることから、ウイルス感染症などの感染リスクを抑えられる点です。また、病院などに通院する手間がかからないのもメリットです。このことから参加者を集めやすく、治験の人数を増やしてより速く開発につなげることもできるでしょう。参加者の日常生活を反映した形でデータ収集ができるのもメリットです。
デメリット
デメリットとして、遠隔で行うことから通信障害の影響を受けることがあります。また、測定に使っていたウエアラブルデバイスが破損した、バッテリーが切れたなどの理由から正しくデータ収集ができないケースがあるのもデメリットです。
治験を実施する側としても、これまでとは異なるやり方で進めていかなければならないため、準備に時間がかかります。
ほか、治験実施者ではなく被験者の自己管理によって進めていくことになるので、しっかり自己管理ができる人物を見つけなければならないのもデメリットといえます。
バーチャル治験の普及率が低い理由
便利なバーチャル治験ではありますが、普及率が高いとはいえません。その理由として以下のことが挙げられます。
認知度が低い
従来の治験と比べると認知度が低く、興味を持っている方が少ないことが挙げられます。この問題を解決するためには、今後さらに認知度を上げでいくための取り組みが求められるでしょう。
従来と異なる治験形式への不安
直接会うのではなく、オンラインで診療を受けることになるため、不安を抱えてしまう方もいます。不安を払拭するための説明や、何かあった際にすぐに相談できる体制を整えておくことが重要といえそうです。
オンラインに対応できない人がいる
治験に参加する方すべてがパソコンやインターネットの扱いに慣れているわけではありません。参加を検討したとしても対応できなかったり、難しいと感じて辞退してしまったりすることも考えられます。