監査証跡とは治験に関係する製造記録や試験記録などのデータを改竄から守る規制方法です。文書などはもちろんですが、現在では多くのデータが電子化されていますので、データの完全性と正確性が客観的に担保されていることを証明する「データインテグリティ(Data integrity)」も含まれます。
監査証跡とは?
監査証跡は、製品の安全性とデータの完全性を保護するための規制であり、不正行為から患者を守る役割を果たします。現在は電子データの記録が主流ではありますが、紙に印刷して手書き署名する資料やデータなどでも改ざんの可能性があるために対策が取られています。
方法としてはベースとなる電子作成のデータを守る対策が実施されます。コンピュータ生成のタイムスタンプ付き電子記録で、誰がいつ何をなぜ行ったかを追跡できるようにするのです。監査証跡のない電子記録は監査されないことになるために、データとしての信頼性がなくなります。
監査証拠の条件としては、次のような項目があります。
- 監査に必要なデータが全て揃っていること
- 必須文書(治験の実施によって得られたデータの質を個々にまとめた記録)を含んでいること
- 事実経過の再現を可能にすること
なぜ監査証跡が必要?
なぜ監査証跡が必要となるのでしょうか。監査証拠は治験においてだけではなく、薬品製造過程などにも採用されています。治験や製薬などは人命にも関わる重大なものですから、データの改ざんは許されません。
そのために、データを修正したり、消去したりすると自動で証拠が残るようになっているのです。また、システムへのアクセス履歴も残りますので、何時、誰がアクセスしたのかも分かるようになっています。
監査証跡のメリット
監査証跡にはデータを守るという大きなメリットがあります。監査証拠という策を講じていなければ、不正アクセスにも対応できませんし、監査のときの説明でも、そのデータは証拠として使えません。それぞれの項目を具体的に見ていきましょう。
不正アクセスの防止
監査証跡を講じることで、不正アクセスを防止することにもつながります。それは、システムへのログイン記録や操作記録を監査証拠として残すことにより、物理的な操作以外のハッキングなどにも対応できるからです。
どのようなセキュリティでも、万が一ということがあります。そのような場合にも誰が、何時不正にアクセスしたのかが記録されます。
このような対策をしておくことで、不正アクセスをしようとしている人たちに対して抑止効果も期待できることになるのです。
説明時の証拠になる
監査証拠は、データを安全に、適切に管理していることの証拠となります。監査のときにさまざまな質問を受けても、監査証拠のあるデータであれば信頼ができ、監査もスムーズに進みます。
しかし、一方で、監査証拠がない場合には、目の前のデータが正しいのか、改ざんされていないのかという客観的な証拠が無いということになります。
現在、多くの企業や研究機関では、信頼性の担保のために、監査証拠を義務付けています。このような場合は、監査証拠がないデータでは、監査が受けられないことになっています。
これからは監査証拠は必須となる
これから社会はますますデジタル化が加速されると予想されています。そのような中、ペーパーレス化も進み、電子データの信頼性を担保することは、非常に重要な条件となっています。
すでに監査証拠を義務化している医療研修機関や企業が多数あるように、これからはさらに監査証拠の重要性が高まってくることと考えられます。まだ、対策がなされていない場合には、早急な実施が必要です。