治験を実施した被験者は、続けて違う治験に参加することはできません。1回目の治験と2回目の治験のあいだには、必ず「休薬期間」が必要になります。なぜ休薬期間が必要なのか、目的・必要性・期間の目安などについて紹介します。
なぜ治験の休薬期間は必要なのか
治験は、投薬や服薬後に人体にどのような影響が出るのか確認するために行われます。薬剤としての安全性・有効性をチェックするためには、副作用が出る時期も含めて十分に期間を設ける必要があります。
また、1回目の治験が終わってから2回目に移るまでには、1回目で体内に入れた薬がきれいに抜けていなくてはなりません。2回目の治験を行う際に1回目の薬の副作用が出た状態では、正しく薬の効果が調べられない場合があります。
また1回目と2回目のあいだに十分な休薬期間がとられない場合、被験者自身にも副作用が出た状態で2回目の治験に臨まなければならず、複合的な副作用のリスクも考えられるため、被験者の健康を守るためにも休薬期間は必要不可欠なものとなっています。
治験中に副作用が起こった場合、前回のくすりの影響なのか、今回のくすりが原因なのかを特定するために時間がかかり、適切な処置を素早く行えないというリスクが出てくることも。 前回の治験薬がすっかり排出されるまで(約4カ月)、次の治験モニターにはなれません。
休薬期間はどれくらい必要なのか
休薬期間は、約4ヶ月以上を空けるケースが平均的です。治験の多くは開発途中の薬を直接服薬や注入し、体調の推移を観察するもののため、薬の分解から吸収、作用・副作用の実感までにしっかりと時間をとる必要があります。薬によっては、被験者の体にどれほどの影響がどの程度の期間現れるかがわからないため、少なくとも4ヶ月間は期間を空けなくてはなりません。
治験薬は既存の薬のように、効果の出るタイミングや副作用の程度が判明していないものが多くみられます。治験の内容によっては、既往症を持っている患者さんを対象としたものもあるため、治験薬によっては患者さんの健康状態に影響を与える可能性もあります。そのため、最低でも4ヶ月間は空けるのが望ましいとされているのです。
血中薬物濃度の半減までに時間がかかる治験薬は、4ヶ月よりもさらに期間を要します。長いケースでは6ヶ月程度の休薬期間を必要とするものもあります。一方で、食品のように副作用のリスクの少ないものについては2回目の治験まで日数をとる必要がなく、1,2ヶ月程度で参加が許される場合もあります。
休薬期間中に治験を行うことによる影響
治験は、複数を同時に掛け持ちすることはできません。いくつもの試験を掛け持ちすると正しく薬の作用や副作用の有無が判断できず、被験者自身にも重篤な副作用のリスクがあるためです。
万が一同時に治験を受けてしまうと、薬の飲み合わせによる副作用の発現と体調不良、何度も血液検査を受けることで体に負担がかかるなど、健康被害に繋がるおそれがあります。
複数の治験会社に登録をして掛け持ちをしようとしても、「臨床試験受託事業協会」の被験者照合システムをチェックすることで重複の有無がわかるため、それ以降の治験の参加を断られる可能性があります。