治験保険について

こちらのページでは、医師主導治験における治験保険の内容について紹介しています。万が一の際に慌てずに済むように、あらかじめ内容について確認しておくことをおすすめします。

保険の種類と適応

GCPでは、医師主導治験において治験保険加入を義務としていませんが、被験者への補償措置を講じておかなければならない、としています。ここでは、被験者への補償措置について見ていきましょう。

被験者補償の措置について検討する

医師主導治験において、被験者の補償には「医療手当(入院または通院が必要な場合に支払われる)」、「医療費(健康保険等からの給付を除く被験者の自己負担分)」「保証金(障害等級1〜3級の場合ならびに死亡時に支払われる)」の3つがあります。

たとえば健康被害が発生した場合、治験を実施する医療機関の補償規定などに基づいて医療の提供が行われることで、これらの3つを十分にカバーできる場合には、治験保険への加入は必要ないとされています。そのため、院内の事務担当などに、院内のみで可能な補償範囲について明確にしておくと良いでしょう。また、医療手当と医療費の2つは、通常治験保険ではカバーされませんので、治験保険加入の検討材料にもなります。

特に、IRBにおける審議資料に詳細を記載する必要があることから、IRB初回申請までには保険加入について検討しておきましょう。それらは、下記の3つの書類が該当します。

治験に関係する保険の種類を理解する

医師主導治験においては、下記4つの保険が関係してきます。

もし被験者に健康被害が発生した場合には、まずは原因が調査され、SAE(重篤な副作用)報告書などの作成が行われます。ここで医師主導治験と健康被害の間の因果関係が否定された場合には、補償責任や賠償責任が生じることはありません。

因果関係がある、または否定できないといったケースでは、続いて「過失があるかどうか」という点について確認し、過失がないと判断された場合には、医師主導治験保険の中の補償責任条項に該当します。

また、過失があるとされた場合、医療行為が原因とされるケースでは、医師賠償責任保険または病院賠償責任保険に該当することになりますし、医療行為以外が原因であれば、医師主導治験保険の中の賠償責任条項に該当することになります。

治験に携わる医療機関や医師は、医師賠償責任保険への加入が必須といえるでしょう。これは、医療行為に起因する被験者の健康被害については、医師賠償責任保険があるためにあえて医師主導治験保険では保険適応外とされているためです。

保険会社の種類と選び方のコツ

医師主導治験における保険会社の種類と選び方を見ていきましょう。

国立大学病院の場合には、「国大協サービス」と呼ばれる保険商品がありますので、こちらに加入します。それ以外の病院の場合には、損害保険ジャパン日本興亜・東京海上日動火災保険・三井住友海上火災保険の3つの保険会社から選択します。

選び方のコツとしては、「治験代表者が勤める病院が加入している病院賠償保険と同じ会社を選ぶ」という点です。これは、万が一の際にも同じ保険会社で契約しておくことによってスムーズな対応が期待できるため。保険契約者は治験調整医師または所属医療機関長とするのが一般的となっています。

また、保険会社を選ぶ場合には、健康被害に対してどの範囲で補償が行われるのか、また補償額や契約形態、保険料などを十分に確認することが大切です。

被験者に保険金が支払われる過程

万が一健康被害が発生した場合に保険金がどう支払われるのかといった点を知る上では、「症例固定」という言葉を知っておく必要があります。この症例固定とは、被験者において健康被害が発生した後、適切に医療が提供され、治験責任医師が判断する最終的な有害事象の転帰(疾患・怪我などの治療における症状の経過や結果)のことを指しています。また、症状固定の時期は、最終的に判断する治験責任医師に委ねられることになります。

被験者に健康被害が発生して保険金が支払われる時期は、「症状が固定してからおよそ1ヶ月程度」です。このことから、健康被害が発生したとしても提供された医療によって症状が改善した場合には、障害等級の1〜3級に該当しなくなるため、保険金の支払いはなし、ということになります。

被験者の健康被害をどう行うかの検討が大切

こちらのページでは、医師主導治験における治験保険について紹介を行ってきました。医師主導治験を行う際には、万が一のことが起きた場合に被験者の健康被害補償をどのように行っていくかが重要になってきます。

そのためにも、院内で対応するための規定があるかどうか・医師賠償責任保険への加入状況の確認、治験保険加入の検討・保険会社の選定について考えていくことが必要です。十分に準備をしておくことによって、補償が必要となった段階で慌てずに対応ができるのではないでしょうか。

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おすすめの治験管理
・支援システム
(CTMS)
【機能別】
おすすめシステム3選

被験者管理や進捗確認、文書対応、監査準備など、治験業務に伴う煩雑な作業を支援し、効率化と法規制対応を実現する治験支援システム。 ここでは、モニタリング・文書管理・EDCの主要機能別に、実績と信頼性のあるおすすめ3システムをご紹介します。

モニタリング業務向け
(治験の実施状況確認・報告)
QLIFICA
(SOLUMINA)
SOLUMINAのキャプチャ

画像引用元:SOLUMINA 公式HP(https://solumina.co.jp/service/#qlifica)

例えばこんな機能
  • 施設・症例・CRA単位で進捗をリアルタイムに見える化
  • チェック内容から報告書を自動作成、承認も一括完了
  • 課題の対応状況を履歴付きで一元管理、監査対応も容易
  • 複数施設の進捗と履歴を即時に把握し、作業漏れを防ぐ。
  • 文書・IRB・監査対応まで一括管理し、全体業務を効率化。
文書管理業務向け
(治験関連文書の保管・共有)
Agatha
(Agatha)
Agathaのキャプチャ

画像引用元:Agatha 公式HP(https://www.agathalife.com/)

例えばこんな機能
  • 文書ごとの承認状況をリアルタイムで一元管理
  • 電子原本として保管し、法規制や監査に対応
  • 試験や組織単位で柔軟に文書構成を設計・運用可能
  • 契約書や申請書類の承認・版管理を統一し、整合性と履歴を正確に管理
  • 原本性を保った電子保管で、GCP・ER/ES対応を文書単位で実現
EDC業務向け
(電子症例報告)
CapTool® シリーズ
(メビックス)
メビックスのキャプチャ

画像引用元:メビックス 公式HP(https://www2.mebix.co.jp/services/edc/)

例えばこんな機能
  • 入力内容に応じて画面項目を自動制御
  • 入力時に整合性エラーを即時にチェックして通知
  • クエリ対応履歴を一覧表示し進捗を共有
  • 入力作業がスムーズになり、記入ミスや作業ストレスを減らせる
  • DMや統計担当者とのやりとりが明確になり、確認・集計の手戻りがなくなる

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