ePROについて

近年に治験では、できるだけ被験者の負担を減らし、施設の業務を削減する観点などから、ePROが導入されています。ここでは、ePROが何なのかを詳しく解説するとともに、ePRO導入のメリットを被験者と施設の視点から紹介します。

ePROとは?

ePROとは、「電子的患者報告アウトカム」と訳されており、治験・臨床研究・食品試験で使われます。「e」が「電子的」というのは理解できますが、「PRO」の「患者報告アウトカム」が耳慣れない言葉ではないでしょうか?

「PRO」は「Patient Reported Outcome」の略です。患者の健康状態に関する患者から直接得られた報告に基づく測定という評価方法のことをPROと言います。治験では、被験者から様々なデータを収集し、有効性や安全性を検証しています。施設で行う検査によって得られるものだけではなく、被験者本人から情報を集めることが重要視されるようになってきました。

被験者から得られるデータのことがPROです。電子的に収集されたものを「ePRO」と呼ぶのに対して、紙(paper)で集めたものは「pPRO」と呼ばれます。

ePROの導入が進んでいる理由

医薬品開発におけるデータ品質の向上

医薬品の開発プロセス、臨床試験においてePROは重要な役割を担っています。従来は紙の調査票が用いられることが一般的でしたが、電子的にデータを収集することで、入力漏れや不正確な記録を減らし、データの質を高めることが可能です。

治験の段階だけでなく、医薬品が市場に出た後の調査にも活用されます。実際に薬を使用している患者さんからリアルタイムで情報を集めることにより、有効性や安全性に関するより正確な評価が可能になり、医薬品の改良や新たな開発体制の構築に貢献します。

患者の治療への積極的な参加促進

ePROは、患者さんが自身の治療へ積極的に関わる「患者エンゲージメント」を高める上で効果的です。スマートフォンやタブレットなどの端末を通じて、患者さんは場所や時間を選ばずに自身の状態を報告できます。報告の負担が軽くなり、継続しやすくなります。

医療従事者も報告された情報を迅速に確認できるため、患者さんへのフィードバックが早くなります。患者さん自身が治療に参加しているという意識を持つことは、自己管理能力や治療への満足度を高めることにつながり、個別化医療の実現に貢献します。

データ収集の効率化と医療経済への貢献

医療経済の観点からもePROは注目されています。従来、紙媒体で患者さんの情報を収集・管理するには、多くの人手や時間が必要でした。ePROを導入することで、データ収集や管理にかかる業務が効率化されます。

ePROで得られるデータは、治療の有効性や安全性を評価するための根拠となります。医療機関や製薬企業は治療の価値を客観的に評価し、適切な価格設定を行うための判断材料として活用することが可能です。

ePROを活用するメリットは?

ePROでは、治験参加時に、スマートフォンにアプリをインストールして、決められたタイミングで質問事項に回答するという方法が採られます。「今朝の薬は飲みましたか?」という質問に対して「はい、飲みました」という回答を選択したり、「体温を教えてください」という質問に対して「36.5」と回答したりといった具合です。このように被験者本人から電子的にデータを得ることには、どのようなメリットがあるのでしょうか?

被験者のメリット

まず、被験者にとってのメリットは、手書きで報告書を作成する手間が省けるという点が大きいです。アプリから送信して報告が完了するので、郵送や持ち込みの手間がかかりません。通院時に持っていくとなると、忘れる可能性があります。紛失のリスクもあります。こうしたリスクを排除できる点もメリットと言えるでしょう。また、アプリからのプッシュ通知で回答すべきタイミングを逃す心配がありません。チェックすべきタイミングでチェックを忘れてしまい、そのときの状態を確認できなくなるというリスクも軽減できます。

企業・施設のメリット

ePROを導入する施設では、コストと業務の削減という大きなメリットがあります。紙の質問票の作成に伴う人件費や印刷費といったコストを削減でき、紙から電子データへの入力業務も不要になります。データの集計や管理が簡単になり、業務効率化が可能です。服薬状況の確認や電話対応していた業務もアプリで完結できます。紙の質問票では、いつ記入したものか分かりません。定められた日にデータを収集することを忘れて、遅れて収集したデータの可能性もあります。ePROなら、データ入力日時が正確に把握できるため、データの質の担保につながるというのも大きなメリットです。重大な副作用が疑われる場合に、早期対応が可能になります。

正確に機能するePRO 導入が大切

被験者本人に健康状態の報告を電子的な方法でしてもらうのが「ePRO」です。主にアプリを通して報告してもらいます。被験者のスマホにアプリをインストールしてもらう方法が一般的です。スマホを持っていない被験者など、アプリが入ったスマホを貸し出すケースもあります。アプリが入力すべきタイミングを通知機能で知らせるため、記録を取ることを忘れるリスクが軽減されます。施設側は入力作業などの業務軽減につながります。正確に機能して、被験者・施設スタッフの双方ともに負担が減るシステムを導入することが大切です。

治験支援システム比較はこちらから

おすすめの治験管理
・支援システム
(CTMS)
【機能別】
おすすめシステム3選

被験者管理や進捗確認、文書対応、監査準備など、治験業務に伴う煩雑な作業を支援し、効率化と法規制対応を実現する治験支援システム。 ここでは、モニタリング・文書管理・EDCの主要機能別に、実績と信頼性のあるおすすめ3システムをご紹介します。

モニタリング業務向け
(治験の実施状況確認・報告)
QLIFICA
(SOLUMINA)
SOLUMINAのキャプチャ

画像引用元:SOLUMINA 公式HP(https://solumina.co.jp/service/#qlifica)

例えばこんな機能
  • 施設・症例・CRA単位で進捗をリアルタイムに見える化
  • チェック内容から報告書を自動作成、承認も一括完了
  • 課題の対応状況を履歴付きで一元管理、監査対応も容易
  • 複数施設の進捗と履歴を即時に把握し、作業漏れを防ぐ。
  • 文書・IRB・監査対応まで一括管理し、全体業務を効率化。
文書管理業務向け
(治験関連文書の保管・共有)
Agatha
(Agatha)
Agathaのキャプチャ

画像引用元:Agatha 公式HP(https://www.agathalife.com/)

例えばこんな機能
  • 文書ごとの承認状況をリアルタイムで一元管理
  • 電子原本として保管し、法規制や監査に対応
  • 試験や組織単位で柔軟に文書構成を設計・運用可能
  • 契約書や申請書類の承認・版管理を統一し、整合性と履歴を正確に管理
  • 原本性を保った電子保管で、GCP・ER/ES対応を文書単位で実現
EDC業務向け
(電子症例報告)
CapTool® シリーズ
(メビックス)
メビックスのキャプチャ

画像引用元:メビックス 公式HP(https://www2.mebix.co.jp/services/edc/)

例えばこんな機能
  • 入力内容に応じて画面項目を自動制御
  • 入力時に整合性エラーを即時にチェックして通知
  • クエリ対応履歴を一覧表示し進捗を共有
  • 入力作業がスムーズになり、記入ミスや作業ストレスを減らせる
  • DMや統計担当者とのやりとりが明確になり、確認・集計の手戻りがなくなる

関連ページ

CTMS Media ~国内の治験・臨床研究支援システム情報まとめサイト~

知っておきたい治験・臨床研究の基礎知識
治験のモニタリング業務とは
治験前にインフォームド・コンセントを行う理由とは
治験の併用禁止薬とは