治験の電子化に伴う電子原本

治験の電子化推進に伴い、電子原本の運用が求められるようになりました。ここでは、電子原本について求められることや運用手法について解説していきます。 治験の電子化に関しては、こちらのページで詳しく解説しています。

治験電子化の
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日本医師会が原本の電子化対応を開始

2014年9月29日、治験業務のためのクラウドサービス「カット・ドゥ・スクエア」を提供している日本医師会治験促進センターが、原本の電子化機能の提供をスタートしています。治験現場では、紙媒体から電子化を進めて業務効率化を図っていましたが、文書を電子化する上で、導入費用や組織間での運用ルール、電子媒体管理規制に対する対応など、さまざまな課題が浮き彫りになっていました。

原本を電子化対応することで、電子媒体で作成された文書を原本として保管できるようになり、紙媒体の原本を保管する必要がなくなります。これまで紙媒体の治験文書の管理にかかっていたコストを抑えられる他、データ入力が簡単になり、利用者間でのデータ共有も効率的になるとされています。

カット・ドゥ・スクエアとは

「カット・ドゥ・スクエア」は、日本医師会治験促進センターが提供する治験文書管理ソリューションです。このシステムは、必須ではない業務(Do)を削減(Cut)するために、活用する場(Square)になるという目的が名前の由来となっています。ただし、2023年3月末をもって日本医師会が治験促進センター業務を打ち切ったことにより、カット・ドゥ・スクエアも2023年2月末で廃止されました。

現在は、さまざまな治験管理・支援システムが民間からも登場しており、治験・臨床研究におけるコスト削減やヒューマンエラーの防止をサポートしています。

電子原本で求められること

治験の電子原本を作成する上で求められるのは、データインテグリティです。データインテグリティとは、データの改ざん・偽造を防止し、データが一貫性があり正確なものであることが客観的に確証されていることを指しています。

治験とデータインテグリティの関係性については、こちらのページで詳しく解説しています。

治験とデータインテグリティの
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治験において求められるデータインテグリティは「ALCOA原則」と「CCEA」の二つです。

ALCOA原則

ALCOA原則とは、データインテグリティを立証するために必要不可欠な要件です。5つの要件の頭文字をとって、ALCOA原則と呼ばれています。ALCOA原則の要件は以下のとおりです。

  1. Attributable(帰属性) :誰がいつ作成したのか
  2. Legible(判読性):正確に理解できる内容か
  3. Contemporaneous(同時性):作成と記録の作成が同時に行われているか
  4. Original(原本性):原本であるか
  5. Accurate(正確性):内容が正確なものか

CCEA

CCEAはALCOA原則にさらに4つの要件を追加したもので、ALCOA+と呼ばれることもあります。ALCOA原則とCCEAのどちらもを満たすことで、データインテグリティをより確実なものにできます。CCEAも要件の頭文字を取っていて、4つの要件は以下のとおりです。

  1. Complete(完全性):必要な全ての情報が揃っているか
  2. Consistent(一貫性):内容に矛盾がなく一貫しているか
  3. Enduring(永続性):必要な期間に閲覧・参照ができるよう保管されているか
  4. Available(可用性):適切に活用できる状態になっているか

電子原本の運用手法を解説

電子原本を導入する上では、Certified Copy(保証付き複写)が必要となります。日本製薬工業協会は、Certified Copyを「使用媒体によらず、元の記録からの複写物で、元の記録の背景、内容及び構成を説明するデータを含め、同一の情報を有することが保証されたもの」と定義しています。紙媒体の原本を電子媒体にする場合は、複写物のPDFに日付と署名の付与が必要です。

また、Certified Copy保証された原本は「検証されたプロセスに従って作成され、運用が適切に実行されたことを保証する」としています。

検証されたプロセスに従って作成された原本とするためには、Certified Copy作成手順に従って電子原本を作成しなければなりません。電子原本作成の手順について、詳しく説明します。

スキャニング

スキャン担当者が紙媒体の原本をスキャナーにかけるのがスキャニングです。スキャニングにおいては、解像度「300 dpi」が推奨されています。また、紙媒体と電子化したデータのページ数が同じになるようスキャンしなければなりません。スキャナの保守点検を定めることは必ずしも必要とはされていませんが、イメージQCによってデータ品質を保証することは求められています。

システムへ格納

スキャンしたデータをシステムに格納します。システムへの格納は、システムに文書をアップロードする文書のアップロード担当者が実施します。

インデキシング(メタデータの付与)

インデキシングとは、スキャニングしたデータのメタデータにタグやキーワードをつけ、検索しやすいようにして、保管先とリンクさせる作業のことを指しています。メタデータに含まれるのは、作成者名・ファイル名・形式など、データの属性情報のことです。

イメージQC+インデキシングQC

複写したデータの品質は、原本の品質を正確に再現したものである必要があります。画像を強調することは推奨されておらず、原本から精度の高い読み取り可能な複写を作成できない場合は、紙媒体の保存を検討しなければなりません。

イメージQCの手順では、以下のことを確認する必要があります。

インデキシングQCでは、組織が決めた手順に基づいて適切にインデキシングが実行されたことを裏付けるプロセスを含めておくことが重要です。組織が決めた手順や使用機器によっては、スキャニング前にインデキシングの作業が必要となることがありますが、どの場合でも文書の最終化の前に全てのメタデータが正確であるかチェックしなければなりません。

文書の最終化

全てのプロセスが完了したら、文書の最終化を行います。文書の最終化を行うまでには、以下の3点を必ず行わなければなりません。

  1. 原本とスキャニングによって作成したデータの同一性を担保するプロセスの実行
  2. システム内でデータの検索・閲覧に必要となるインデキシングの実施
  3. 適切にデータがシステムに格納され、文書が最終化されていることを立証できる手順の構築

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     治験支援システム PICK UP

このサイトをご覧なら、治験業務の負担を減らす支援システムの導入を検討中だと思います。治験のシステムといえば「CTMS(治験管理システム)」を連想するかもしれませんが、CTMSはマネジメントの要素が強いため、「モニタング業務の負担軽減」「文書管理を自動化したい」といった目的が他にあるのであれば、各目的に特化したシステムの導入も検討してみてはいかがでしょうか。運用目的にフォーカスされている分、より低コストで運用できる高機能なシステムが見つかるはずです。

特にニーズの高まっている3つの目的に関してピックアップしてご紹介します。

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