分散化臨床試験(DCT)とは何か
分散化臨床試験(DCT)とは、医療機関に患者さんが来院せず、スマートフォンやウェアラブル端末を使って臨床試験に臨む方法です。
従来の臨床試験は病院などに来院する手間がかかっていましたが、端末を使うことでデータが自宅などで取得できるようになり、患者さんや治験の協力者の負担が大きく減らせるようになりました。
医療機関に依存しない新しい形式の臨床試験は、2011年にファイザー社が行ったリモート試験が初とされています。
分散化臨床試験(DCT)のメリット
分散化臨床試験(DCT)のメリットは、被験者側と実施する側の双方にもたらされます。3つのポイントに分けて詳しくみていきましょう。
通院の手間がかからない
臨床試験を受ける被験者にとって、通院や来院には時間の制約や物理的に足を運ばなければならない負担があります。特に疾患を抱えている患者さんは、来院に大きな負担がともないますが、DCTでは自宅や医療機関に居ながらにして楽に臨床試験を受けることができます。
被験者が集めやすくなる
新薬の臨床試験は、既往症を持っている人・健常者などさまざまな健康状態の人を対象に行われます。従来は募集をかけるなどして被験者を集めてきましたが、来院の手間がかかるために被験者が集まりにくいデメリットがありました。
DCTではウェアラブル端末などを被験者の自宅に送付するなどして調査ができるため、被験者にとっても荷が軽くなり、募集側も被験者を募集しやすくなるメリットが期待できます。
臨床試験にかかる時間・費用の縮小
被験者を短期間のうちに募集できるようになり、コストや時間がかからなくなったこともメリットのひとつです。
試験に使う施設を数ヶ所に集約できるようになる・自動的に送られてくるデータを自動で集めて解析できるなど、試験にかけるトータルコストも減らせます。
分散化臨床試験(DCT)の課題と今後について
新型コロナウイルス感染症の流行によって、分散化臨床試験(DCT)の重要性や役割がさらに注目されています。しかし一方で、オンラインの臨床試験が不安な方や個人のプライバシーへの配慮などが課題となっています。
DCTは発展途上の分野であり、今後さらに医療機関や製薬会社にDCTの利便性を周知していく必要があります。
被験者に対しては臨床試験基準を整え、安心して試験に臨めるように仕組みを作っていくこと、自宅で受けられる試験の種類も増やして、幅を広げていくことが課題といえるでしょう。